Dr.Niwa passed away(from WEB News)
Walking Distance 5.86km 、6245Steps
(Oumi-Shrine、JR-Otsukyo)
昨日、元奈良女子大学学長であった丹羽雅子博士が亡くなったとの WEB ニュースがあった。
日本最初の女性国立大学学長であったことで知られているが、それよりも家政学の中で被服の風合い研究で世界的に名声を得ていた学者である。
我々の学生時代に研究された、布帛の風合い数量化理論がある。これは当時京都大学教授であった川端季雄博士の研究成果で、これを利用し実用化したのが KES(Kawabata Evaluation System)システムである。
丹羽博士はこのKESを使って、服地の仕立て映えなどの評価を数値で表すことにトライしている。それまで熟練技能者のハンドリング能力で判断していたものを、だれでも確認できる数値で表現することに成功している。KES は川端・丹羽のシステムといってよいほど共同して研究を進めていた。
現在では衣服産業のみならず、布帛を扱う工業のいろんな工程でこの KES 数値が使われおり、強度などの物理量と同じように規格値として世界で採用されている。
例えば自動車の座席シートの皮を含めた布帛は、強伸度などの物理量のほかに、このKES値も規格の項目になっており、風合いがこの数値で管理されている。
大学院時代同僚がこの KES に関する研究に参加しており、当時今のように世界で使われるシステムになるとは予想もできなかった。
大学院時代川端教授の講義を受けているが、とにかく数学にめっぽう強い先生であった。中学生時代に熱力学第二法則の偏微分方程式を自分で独自に導き出したという。ということはエントロピーの概念を自ら考え出したということになる。講義は確率論を基盤にしたルベーグ積分などのほとんど数学の時間で、具体的な理解が難しかったことだけを覚えている。
すでに川端博士も亡くなっており、丹羽博士も亡くなり、KES の生みの親がいなくなった。しかし、KESは今後も世界でいろいろな工業の中で利用されていくものと思う。
川端博士は、1989年に設立されたモエヘネシー・ルイヴィトン「芸術のための科学」国際科学賞の第一回受賞者に選ばれている。丹羽博士逝去のニュースを受けて、世界的な研究成果であったことを再度認識した。