2020年8月4日火曜日

Bird Net(防鳥ネット)

Bird Net in Rice Field near Yanagawa
Walking 6.27 km, 5271 Steps
(Dentist, Yanagawa, Branch Otsukyo)

  柳川近くの田んぼでは稲穂が大きくなりつつあるが、鳥除けの青いネットが張られた。

  ところで、農業用のネットとしては寒冷紗がよく使われる。茶畑などで、直射日光を和らげる目的で使われる。この織物は毛羽のある紡績糸の目の粗い織物である。普通は黒に染められている。

  就職して最初の仕事はウォータージェットルームの技術開発であった。その中に、農業用寒冷紗をウォータージェットルームで織る技術を開発する業務もあった。

  ウォータージェットルームは緯糸を水ジェットで飛ばして織る織機である。緯糸を巻いた管の入った杼を走らせて織る従来の普通織機と比べて、製織スピードが3倍から10倍にもなる高速織機である。

  この織機で寒冷紗を織れるようにして、その生産性を上げるのが目的であった。数年の歳月をかけたが、紡績糸は水に弱く、毛羽が邪魔をして経糸切れが多発した。その解決策がなく、結局実用化は出来なかった。

  実用化は、その後開発されたエーアージェットルーム(水を使わず、空気ジェットで緯糸を飛ばす)により実現化する。

  寒冷紗は織物であるが、農業用ネットには経編のラッセル、有結節ネットなどがある。今回使用されていたのは、おそらくポリプロピレン製融着結節ネットではないかと思われる。最もコストが安い。

  稲穂に掛けられた青いネットを見て、若き頃の仕事を思い出した。失敗物語であった。

寒冷紗 青いネット見て 思い出す
(かんれいしゃ あおいネットみて おもいだす) 

  ちなみに、ウォータージェットルームの歴史を書き残しておきたく思う。

  ウォータージェットルームを世界で最初に発明したのはチェコであった。戦後、一部繊維産業で使用されたが、安定性がなく本格的な普及には至らなかった。

  我々が学生時代、日産自動車に買収される前のプリンス自動車が新たなウォータージェットルームを開発した。しかし、同じように安定性がなく普及しなかった。

  普及に大きな役割を演じたのが、現役時代の会社が開発したジェットノズルである。このノズルを使うと安定生産でき、稼働率99%と、ほとんど織機が止まることなく運転が出来るようになった。

  織工さん一人で100台の運転が可能で、しかも製織スピードが従来の織機の3倍であった。今では10倍までスピードアップしている。(旧普通織機:100~150rpm、ウォータージェットルーム:500~1500rpm)

  プリンス自動車が日産自動車に買収された後も、日産自動車の製品として世界を席巻したが、ゴーン時代に日産にとっては根幹事業ではないとして撤退している。その事業は豊田自動織機に移管された。今では津田駒工業なども参入し、海外でも生産されている。

  ウォータージェットルームの技術も基本発明は欧米で、実用化したのは日本という、戦後日本の繁栄を支えたパターンの製品の一つである。

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