現役最後の仕事は、産業技術総合研究所(産総研)での単層カーボンナノチューブ(単層CNT)の研究開発業務であった。
すでにその仕事から離れてほぼ10年ほどたつが、その後の状況についてはいつも気にかけている。
昨日のWEBニュースで、産総研、オーミケンシ、そして信州大学がCNT複合セルロース繊維を開発したと報じられた。ようやく実用的な繊維に応用が可能になったようである。
もともとドイツのアウトバーンでは200km~300km/Hのスピードで走ることを前提にタイヤが選ばれおり、その補強材にはセルロース繊維であるレーヨンが使われている。その理由はタイヤ走行時の発熱が少ない点と、弾性率が高いためである。
さらには最近では世界的にランフラットタイヤが普及している。これはパンクしても修理工場までかなりの距離をそのままで走行できるようタイヤ側面を補強したものである。
パンク時の事故防止と、路上でのタイヤ交換作業をなくすということ、そしてスペアタイヤがいらなくなるので自動車内のスペースが有効に使えるというメリットがある。
このタイヤの補強材も、弾性率が高いという点でレーヨンが使われている。
しかしレーヨンは硫化水素などの有害溶剤を使うため環境負荷が大きく、環境を考えると増産は不可能である。現役時代勤めていた会社は、このレーヨンの生産では日本最大の会社であった。しかし環境問題などからいち早く撤退している。
そして今でも少量ながら生産しているのがオーミケンシである。そのオーミケンシと信州大学繊維学部も加わり、環境負荷を低減できるCNT複合セルロース繊維を開発している。
その繊維の構造は、セルロースの繊維束に分散するようにカーボンナノチューブが入っているもので、今までのレーヨンの溶剤は使用しなくて良いとのこと。
日本での応用としてはこのランフラットタイヤであるが、ドイツではアウトバーン用タイヤ補強にも使えると考えられる。
CNT レーヨン繊維 タイヤ用
(シーエヌティー レーヨンせんい タイヤよう)
当時開発していた単層カーボンナノチューブの生産は、すでに日本ゼオンで開始されており、一大産業に発展することを期待している。
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